母乳の守る力

オステオポンチン

オステオポンチンとは

オステオポンチンは、細胞が分泌するサイトカイン*とよばれるたんぱく質のひとつで、ヒトの体内の多くの組織に存在します。特に臍帯血や乳児の血漿に高濃度に含有され[1]、母乳中の細胞において最も多く遺伝子発現すると報告されています。

*サイトカインとは、インターフェロン、インターロイキン、成長因子などの物質の総称で、主に免疫細胞が分泌し、他の細胞に働きかける役割をもっています。

オステオポンチンの機能

生後間もない乳児は免疫機能が十分ではありません。最近の研究では、母乳には母親由来の免疫細胞が含まれ、生後間もない乳児の免疫機能を助ける働きがあると考えられています。オステオポンチンは、母乳中の細胞が最も多く発現するサイトカイン関連遺伝子といわれており[2]、母乳の働きに関与していると考えられています。

「母乳オステオポンチン」に関する国際共同研究

オステオポンチンは乳児の免疫機能の発達に重要な役割を担っている成分です。しかしながら、母乳中のオステオポンチン含量を詳細に把握するための研究はほとんどありませんでした。
そこで、私たちは、日本、中国、韓国およびデンマークの計629名の母親より提供された母乳を対象に、オステオポンチン濃度を大規模に調査する多国間共同研究を実施しました。800検体を超えた多国間での母乳とOPNに関する共同研究は世界初の取り組みとなります。
その結果、母乳中のOPN濃度は、国によって異なり、産後日数の経過に伴い濃度が低下することが明らかになりました[3]。

参考文献

  • 1 Schack L, Lange A, Kelsen J, et al. Considerable variation in the concentration of osteopontin in human milk, bovine milk, and infant formulas. J Dairy Sci. 2009;92(11):5378-5385.
  • 2 Nagatomo T, Ohga S, Takada H, et al. Microarray analysis of human milk cells: persistent high expression of osteopontin during the lactation period. Clin Exp Immunol. 2004;138(1):47-53.
  • 3 Bruun S, Jacobsen LN, Ze X, et al. Osteopontin Levels in Human Milk vary Across Countries and within Lactation Period: Data from a Multicenter Study. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2018;67(2):250-258.