ブランド創設スタッフ

山野氏

(右):大塚製薬(株)、ビーンスターク・ブランド起ち上げ時のプロダクトマーケティングマネージャー

佐藤氏

(左):(株)ホワイトルーム(現、(株)コディーノ)時代から、ビーンスターク・ブランドに携わるアートディレクター

ブランドの起ち上げに
深く関わったお2人をお招きして
当時のお話やブランドの未来まで
たっぷりとお話を伺いました。

「豆」は突然に

---ビーンスターク・ブランドの起ち上げ当初で一番印象に残っていることは何でしょうか?

山野大塚製薬で乳児のブランドを手がけるのは初めてのことでしたので、とにかく全てが手探り状態でのスタートでした。
当時、ニプルの開発に携わっていただいた先生を訪ねて、東京大学医学部附属病院の歯科口腔外科には足しげく通いましたね。

---最初の製品はニプル。その成型からスタートされたということですね?

山野そうですね。元々、ニプル・哺乳びんというのは、何らかの理由によって母乳を飲むことができない赤ちゃんに、粉ミルクを飲ませるための「道具」でした。ドイツのヌークなどは飲み方にちょっと工夫のされたものがありましたが、赤ちゃんがお母さんのおっぱいをくわえるのと同じようにミルクが飲めるようなものは、当時の日本にはほとんどありませんでした。そのような時代に、東京大学医学部付属病院の先生が「噛むような動作で飲めるニプル」だとか「あごの発育に」などと学会で発表したため、新しい発想なだけに、いろいろな方面から異論や驚きの声は大きかったですね。その後、2年ほどして、日本においても「母乳を飲むときと同じように飲めるニプル」という理解も深まっていったのですが、発売当時はかなり先行していた感じがします。

---啓発にはご苦労もあったのでは?

山野小児保健分野ではA先生、アレルギーについてはB先生、飲料だったらC先生というような感じで、国内外問わず各方面でいろいろな先生を訪問しました。

エビデンスへのこだわり

---大塚製薬は製品開発にあたりエビデンスにもこだわりを持たれていますが、ニプルにおいてはどういう点なのでしょうか?

山野赤ちゃんの上あご中央には吸啜窩(きゅうせつか)というものがあって、いわゆる乳首やニプルをくわえた時にはそこにまるようになっています。そして、舌と顎を上下させて、ちょうど蠕動運動に近い運動をしながら飲むのです。ビーンスタークのニプルはその動きに応じて、赤ちゃんにとってミルクが飲みやすいと同時に、口の動きが母乳を飲む時に近くなるように開発しました。

ニュートラルな立場であごの発育や口の機能などを研究されている先生がいないかと国内外のDr.を訪ねている時に、朝日大学歯学部の田村康夫先生*との出会いがありました。これまで、母乳を飲んでいる子と他社のニプルで飲んでいる子、ビーンスタークで飲んでいる子の三者の比較データを有していましたが、加えて、哺乳びん内にカメラを設置し、映像と筋電図を使った解り易い方法で、赤ちゃんの口腔形態とお母さんのおっぱいを吸う吸綴運動時の咀嚼機能を研究していただきました。

また、成長して乳歯列になった時にはどうなるかも追跡調査を行いました。3歳児くらいの乳歯列は歯列の隙間が空いていなければなりません。乳歯列がくっついていると、次に永久歯が生えてきた時に、サイズが違うので不正咬合を起こす原因になるのです。そこで乳歯列の隙間を測ったところ、有意にビーンスタークで飲んでいる子どもは隙間があった、ということは当時学会でも発表されました。

---ところで、ブランド名が「ビーンスターク」に決まったいきさつについて教えてください?

山野最初は、豆のマークはありませんでした。試行錯誤のサンプルを幾つか社長(当時)の所に持って行った際に、「豆が成長するみたいなイメージで何かないかなぁ」と尋ねられて、イングランド民話の「ジャックと豆の木」に出てくる「晩にまくと、朝には天まで伸びる豆の木」が思い浮かんだのですね。そこから「豆」をキーワードにデザインしてもらいました。そして、子どもたちがこの豆の木のようにすくすくと健やかに育ってくれたらとの想いから、名前も「ビーンスターク」となりました。

---ブランドカラーとしてグリーンを選ばれたのはビーンスタークにちなんでということでしょうか?

佐藤そうです。25年前の乳幼児メーカーは、ハーフトーンの色の方が優しいとの理由から薄い水色、薄い黄色、薄いピンクが中心でした。ビビッドな色はあまりなかったですね。そこで、あえてもっとヨーロッパっぽいというか、洗練されたはっきりした色で、ちょっとインテリジェンスを感じるようなものに絞ってデザインしました。

---もくもくとわき出した雲や空まで伸びたツルなどのビーンスターク・ワールドのモチーフは、後からできたものですか?

山野それは物語に合わせてデザインしていただきました。

---製品もビーンスターク・ワールドのイメージを持って生み出したと伺ったのですが?

山野当時、物語に合わせて製品開発をしたいと思っていました。物語の「ジャックと豆の木」の中には金貨や金の卵を産むニワトリ、そして歌を奏でるハープなどが出てきます。金の卵を産むニワトリ、卵は、まさしくビーンスタークのポカリスエット。そして歌を奏でるハープが出てくる最後の部分で、世の中を和やかにする、というストーリーで引き立てていこうと考えていました。

ビーンスタークポカリスエット120ml/瓶

---ビーンスターク ポカリスエットは卵のカタチだったのですね!

山野そう、あのカタチ(笑)。最初は、出来るだけ卵に近いカタチでデザインしてもらったのですが、工場で製造する過程で、卵型だと底が安定しないという理由から、最終的に今のカタチにおさまったのです。でも、「卵」をイメージして見てみると卵っぽく見えてきませんか(笑)。

---他にもデザインにこだわられたところがあるとか?

山野全体的に一体感のあるデザインにしたかったのですね。哺乳びん(ガラス)についてもキャップをはめた際に、やはり卵に近いカプセルのような一体感を持たせるのに苦労しました。

---ビーンスタークのこだわり抜いた世界観を描く際のエピソードはありますか?

山野すごい枚数のデザインを書いていただきましたよね?

佐藤当時はもちろんアナログですからね。コンピュータがなかった時代なので大変だった記憶はありますね。

優しくて新しいものを

佐藤ビーンスターク・ブランドの起ち上げは、ニプルからスタートしたわけですが、当時、「かめない子・かまない子」の問題や、アゴの発育が悪く歯ならびの悪いお子さんが多くなっているという報告がありました。その原因を探っていたところ、ニプルにも問題があるらしいということが分かりました。単純に哺乳びんとニプルを売るということだけではなくて、先ほどの咀嚼機能の調査ではないですが、ビーンスタークを使った赤ちゃんが、20年後30年後にどう育っていくかを踏まえて製品を生み出すという考えが大塚製薬さんにはありましたね。しかもビーンスタークに対する物凄いドリームが山野さんにあったのですね(笑)。「私はこうしたい」という確固たる想いがあったので、それにずっと寄り添ってきたという感じがあります。ポカリスエットの卵のカタチにしてもそう(笑)。そのためにはどうしたらよいか、すべての商品について熱意をもって新しいことへチャレンジしてきました。哺乳びん保温ケースやスタイ(よだれかけ)に至るまでいろいろとデザインしましたね…。

哺乳瓶保温ケース

---いくつかお持ちになっていただいています。

---時代を重ねても変えないように心がけているところはどこでしょうか?

佐藤シンプルで上質という点は常に意識していますね。ビーンスターク・ブランドに25年間携わらせていただいた中で、雪印さんと一緒になって、「ビーンスターク」というブランド名が社名になりました。ひとつの商品名、ブランド名だったものがひとつの会社の名前になる、当時は全く想像すらしていなかったことでした。

---これから先、どんな風にブランドが育ってほしいと思われますか?

山野25年も続いているというのは、ビーンスタークが今まで皆さまに愛用していただいた証だと思います。その世界観を大切に、お母さんや赤ちゃんに優しくて、しかも世の中にない新しいものを発想して、これから先も愛されるブランドであり続けてほしいと思いますね。

---ありがとうございました。

*田村康夫先生:現、朝日大学 副学長 歯学部教授(小児歯科学)